イベントの入場者数とツイート数は連動するのか?(2026年10月版)

2015年9月に「イベントの入場者数とツイート数は連動するのか?」という記事を書きました。神戸ルミナリエの日別入場者数と、「神戸ルミナリエ」を含むツイート数を、数量化Ⅰ類で回帰分析した回です。
結果は、入場者が増えるとツイートが減るという不思議な式でした。当時のまとめには「入場者数が増えるとツイート数が減る現象は謎です。」と書いています。

あれから11年。Twitterは X になり、API は有料になりました。同じ問いを、2026年秋の幕張メッセと東京ビッグサイトのイベントでやり直します。コミケも調べました。

先に結論を書きます。今回は、来場者が多い日ほど投稿も多くなりました(相関係数 r=0.89)。ただし、投稿数を決めていたのは「何人来たか」よりも「どんなイベントか」でした。

0.使用するデータ

投稿数
2015年は Twitter の API でツイートを集めました。今は個人が無料で検索できる枠がありません。
そこで、Yahoo!リアルタイム検索の「投稿数の推移」を使いました。キーワードを含む X の投稿数を、1日ごとに直近30日分まで表示してくれます。取得したのは2026年10月13日なので、使えるのは9月14日〜10月12日の29日分です。

来場者数
この29日間に幕張メッセか東京ビッグサイトで開かれ、主催者が日別の来場者数を発表しているイベントを探しました。見つかったのは次の3つ、合わせて11日分です。

 
 
 
 
イベント 会場 会期 来場者数(合計)
東京ゲームショウ2026 幕張メッセ 9月17日〜20日 257,642人
ツーリズムEXPOジャパン2026 東京ビッグサイト 9月24日〜27日 183,378人
国際福祉機器展 H.C.R.2026 東京ビッグサイト 10月7日〜9日 110,958人
 
 
 
 
  • 東京ゲームショウ2026はゲームの展示会です。前半2日はビジネスデイ、後半は一般公開です。
  • ツーリズムEXPOジャパン2026は旅行の展示会です。前半2日は業界日、後半は一般日です。
  • 国際福祉機器展 H.C.R.2026は福祉機器の展示会です。3日とも平日です。

東京ゲームショウは、30周年で初めての5日間開催になるはずでした。最終日の9月21日(月・祝)は、台風25号の接近でリアル会場が中止になっています。この日はあとでもう一度出てきます。

日別の数字は次のとおりです。投稿数は、表の「検索語」を含む投稿の件数です。

 
 
 
 
イベント(検索語) 日付 区分 来場者数 投稿数 来場者1,000人あたりの投稿数
東京ゲームショウ 9/17(木) ビジネスデイ 53,630人 5,932件 111件
東京ゲームショウ 9/18(金) ビジネスデイ 52,545人 4,510件 86件
東京ゲームショウ 9/19(土) 一般公開 78,678人 9,693件 123件
東京ゲームショウ 9/20(日) 一般公開 72,789人 7,796件 107件
ツーリズムEXPO 9/24(木) 業界日 31,510人 401件 13件
ツーリズムEXPO 9/25(金) 業界日 38,518人 480件 12件
ツーリズムEXPO 9/26(土) 一般日・雨 61,394人 1,755件 29件
ツーリズムEXPO 9/27(日) 一般日 51,956人 1,663件 32件
国際福祉機器展 10/7(水) 平日 37,025人 176件 4.8件
国際福祉機器展 10/8(木) 平日 39,064人 161件 4.1件
国際福祉機器展 10/9(金) 平日 34,869人 188件 5.4件
 
 
 
 

2015年の神戸ルミナリエは、入場者が1日10万〜50万人ほどいて、ツイートは1日平均200件ほどでした。1,000人あたりにすると1件前後です。集め方が違うので単純には比べられませんが、今回の3イベントはどれもそれより多い値です。

東京ゲームショウ、ツーリズムEXPO、国際福祉機器展の名前を含むXの投稿数の推移。どれも会期中に山ができる
【図1】イベント名を含む投稿数の推移(2026年9月14日〜10月12日)

どのイベントも、会期に合わせてきれいな山ができます。ただし縦軸の目盛りに注目してください。上から1万件、2,000件、200件と、50倍の開きがあります。

1.入場者数の回帰分析

前回と同じ順番で進めます。まずは来場者数を、数量化Ⅰ類で説明してみます。
数値でない情報は、当てはまれば1、当てはまらなければ0に置き換えます。今回使ったのは「どのイベントか」と「一般公開日かどうか」です。

来場者数=36,986 + 16,348×東京ゲームショウ − 2,218×ツーリズムEXPO + 22,154×一般公開日

決定係数は0.96です。予想と実際の誤差は、11日とも±10%ほどに収まりました(最大は9月24日の+10.3%)。
読み方はこうです。平日の国際福祉機器展が基準で約3.7万人。東京ゲームショウならそこに1.6万人が上乗せされ、一般公開日ならさらに2.2万人増えます。ツーリズムEXPOの係数は誤差の範囲で、基準との差があるとは言えません。

前回は天気(雨)が効きました。今回は雨の日が1日しかなく、係数を出せません。その1日(9月26日)は、ツーリズムEXPOで最も来場者が多い日でした。屋内の展示会は、雨でもあまり困らないようです。
一方で、台風は別格でした。東京ゲームショウの最終日は、来場者数が0人です。

2.投稿数と入場者数の関係性

本題です。横軸を来場者数、縦軸を投稿数にして、11日分を並べます。

来場者数と投稿数の散布図。右上がりだが、イベントごとに3つのかたまりに分かれている
【図2】来場者数と投稿数(縦軸は対数目盛)

相関係数は r=0.89、r²=0.80 です。有意かどうかの簡便な目安 4/(n+2)=0.31 を大きく上回ります。2015年とは逆に、来場者が多い日ほど投稿も多い、という結果になりました。

ただ、図をよく見ると、点はイベントごとに3つのかたまりに分かれています。
来場者が5万人台の日を比べてみます。東京ゲームショウの9月17日は5.4万人で5,932件。ツーリズムEXPOの9月27日は5.2万人で1,663件。人数はほぼ同じなのに、投稿数は3.6倍違います。

そこで、説明変数を入れ替えて決定係数を比べました。

 
 
 
 
投稿数を何で説明するか 決定係数
来場者数だけ 0.80
どのイベントか、だけ 0.86
来場者数 + どのイベントか 0.96
 
 
 
 

来場者数を知らなくても、イベントの名前だけで投稿数の86%が説明できます。人数だけで説明するよりも良い値です。両方を使った式は次のとおりです。

投稿数=−3,746 + 0.106×来場者数 + 3,900×東京ゲームショウ − 39×ツーリズムEXPO

前回の式は「ツイート数=255 − 入場者数×0.00046 + …」で、入場者数の係数がマイナスでした。今回はプラスです。来場者が1万人増えると、投稿は約1,060件増えます。

ただし、この式には欠点があります。投稿数が少ない日の予想が大きく外れます。ツーリズムEXPOの9月24日は予想が−445件、国際福祉機器展の10月9日は−49件でした。投稿数がマイナスになることはありません。桁が違うものを足し算の式で扱ったのが原因です。
そこで、来場者数と投稿数の両方を対数にして、同じ計算をやり直しました。

log(投稿数)=−17.44 + 2.15×log(来場者数) + 2.49×東京ゲームショウ + 1.21×ツーリズムEXPO

決定係数は0.99。誤差は11日とも−27%〜+33%に収まりました。式の意味は次の2点です。

  • 同じイベントの中では、来場者が10%増えると投稿は約23%増える。
  • 来場者数が同じなら、東京ゲームショウの投稿数は国際福祉機器展の約12倍、ツーリズムEXPOは約3.3倍になる。

来場者が増える以上に投稿が増えるのは、一般公開日の効果だと考えられます。仕事で来た人より、遊びに来た人のほうが投稿するということです。

来場者1,000人あたりの投稿数の棒グラフ。東京ゲームショウは86〜123件、ツーリズムEXPOは12〜32件、国際福祉機器展は4〜5件
【図3】来場者1,000人あたりの投稿数

来場者1,000人あたりの投稿数にすると、違いがはっきりします。会期全体で、東京ゲームショウは108件、ツーリズムEXPOは23件、国際福祉機器展は4.7件。最大と最小で23倍の差です。
ツーリズムEXPOは、業界日(12〜13件)と一般日(29〜32件)で2倍以上違いました。

来場者0人で3,252件
台風で中止になった9月21日、「東京ゲームショウ」を含む投稿は3,252件ありました。会場には誰もいません。中止を知らせる投稿、残念がる投稿、オンライン配信の感想などが含まれるはずです。
この件数は、ツーリズムEXPOで最も多かった日(1,755件、来場者6.1万人)の倍近くあります。

「謎」は再現した
イベントごとに分けて相関を見ると、東京ゲームショウは r=0.96、ツーリズムEXPOも r=0.96 でした。ところが国際福祉機器展は r=−1.00 です。来場者が多い日ほど投稿が少ない。2015年と同じ現象です。
ただし、これは3日分のデータで、投稿数は161〜188件の幅しかありません。来場者数の差も4,000人ほどです。数十件の投稿は、出展者の告知が1日ずれるだけで入れ替わります。2015年の神戸ルミナリエも1日200件ほどでした。あの「謎」の正体は、件数が少なすぎて偶然に振り回されていただけ、という可能性が高いと今は考えています。

3.コミケはどうなのか

東京ビッグサイトの大型イベントといえばコミックマーケットです。直近3回の来場者数は次のとおりです。

 
 
 
 
開催回 会期 来場者数(準備会発表)
コミックマーケット106 2025年8月16日〜17日 2日間で25万人
コミックマーケット107 2025年12月30日〜31日 2日間で30万人(各日15万人)
コミックマーケット108 2026年8月15日〜16日 2日間で26万人(各日13万人)
 
 
 
 

残念ながら、コミケは今回の分析に入れられませんでした。理由は2つあります。

  • 投稿数をさかのぼれるのは30日前までで、8月のコミックマーケット108には届かない。
  • 来場者数が1万人単位の発表で、しかも日ごとの差がほとんどない。今のコミケは事前に買うチケットとリストバンドで入場する方式なので、人数は売った枚数でほぼ決まる。

2つ目は、回帰分析にとって致命的です。来場者数が毎日13万人なら、投稿数がどう動いても「来場者数との関係」は計算できません。天気や曜日で人数が動いた神戸ルミナリエとは、前提が変わっています。

かわりに分かったこともあります。開催のない9月14日〜10月12日でも、「コミケ」を含む投稿は1日平均1,249件ありました(最少823件、最多1,785件)。何も開かれていない日の「コミケ」が、開催中のツーリズムEXPOの平日(401〜480件)の約3倍です。
次の冬のコミックマーケット109は、東京ビッグサイトの改修工事で使えるホールが減った影響を受け、8年ぶりの3日間開催(12月29日〜31日)になります。開催から30日以内なら投稿数を取れるので、年明けに確かめるつもりです。

4.会場名で見ると、いちばん高い山は別のイベントだった

イベント名ではなく、会場名を含む投稿も数えてみました。

幕張メッセ、ビッグサイトを含む投稿数の推移。ビッグサイトの最大の山は10月11日
【図4】会場名を含む投稿数の推移

「幕張メッセ」は、東京ゲームショウの一般公開初日(9月19日、1,763件)が最多でした。ここまでは予想どおりです。
「ビッグサイト」は違いました。4日間で18万人を集めたツーリズムEXPOの期間は、最多でも424件。国際福祉機器展の3日間は295〜514件です。いちばん高い山は10月11日の2,419件、次が10月4日の1,343件でした。

調べると、どちらも同人誌即売会の日でした。10月4日は東方Projectの「博麗神社秋季例大祭」、10月11日は「COMIC CITY SPARK 21」です。「例大祭」を含む投稿は、10月4日だけで11,470件ありました。「東京ゲームショウ」の最多日(9,693件)を上回ります。
この2つは、主催者が来場者数を発表していません。つまり、投稿が最も多い日は、来場者数が分からない日でした。入場者数とツイート数の関係を調べようとすると、いちばん盛り上がっている所がデータから抜け落ちます。

なお「幕張メッセ」は10月4日にも1,381件の山があります。この日に何があったのかは、突き止められませんでした。

5.まとめ

3つのイベントの来場者数と投稿数をまとめたイラスト
【図5】今回の結果のまとめ(NotebookLMで作成)

■来場者数と投稿数は、今回は連動しました(r=0.89)。2015年の「入場者が増えるとツイートが減る」は再現しませんでした。
■ただし、投稿数は来場者数よりもイベントの種類で決まります。来場者1,000人あたりの投稿数は、東京ゲームショウ108件、ツーリズムEXPO 23件、国際福祉機器展4.7件でした。
■同じイベントの中では、一般公開日のほうが1人あたりの投稿が多くなります。
■来場者が0人でも投稿は出ます(台風で中止の日に3,252件)。投稿する人は、会場にいる人だけではありません。前回も、ツイートをしたユーザー全員が「入場となんらかの関係を持っているとは考えられません」と書いていました。そのとおりでした。
■2015年の「謎」は、1日200件という少ない件数が原因だった可能性が高いです。今回も、件数の少ない国際福祉機器展だけで同じ現象が出ました。
■コミケは、チケット制で来場者数が動かないため、この方法では分析できません。
■投稿がいちばん多かったのは同人誌即売会の日で、その来場者数は発表されていません。

今回の限界

  • 対象は3イベント11日分だけです。イベントを増やせば結論が変わるかもしれません。
  • 投稿数は Yahoo!リアルタイム検索の表示値です。数え方の詳細(リポストを含むかなど)は公開されていません。
  • 検索語で件数が変わります。「東京ゲームショウ」のかわりに「TGS2026」で数えると、件数は2倍前後になります(9月19日は21,898件)。この場合も全体の相関は r=0.86 で、結論は同じでした。
  • 30日より前には、さかのぼれません。同じ分析を続けるには、イベントのたびに記録しておく必要があります。

前回は「要因を上手く設定しないと、ちゃんとした結果が出にくいです。」と締めました。11年たって分かったのは、その要因の第一候補が「イベントの種類」だったということです。人数を数える前に、誰が何をしに来るイベントなのかを見る。当たり前のようで、2015年の私は1つのイベントしか見ていなかったので気づけませんでした。
とりあえず、数量化Ⅰ類をもう一度試せたので良しとしましょう。

出典