2014年に「客はクチコミに何を求めているのか」という記事をその2・その3まで、3本書きました。
価格.comのレビューを形態素解析で単語まで分解したり、楽天市場のレビューから性別・年齢を抜き出してグラフ化したり、当時はけっこう泥臭いことをやっていました。
あれから11年。生成AIが当たり前になった今、客がクチコミに求めるものはどう変わったんでしょうか。NotebookLMのDeep Research機能を使って調べてみました。
0.まず前回のおさらい
2014年の3部作でやっていたのはこんな感じでした。
- 価格.comのレビューを満足度(1〜5)別に集計したら、「満足度1(不満)」のレビューがやたら多い商品があり、負のクチコミの影響力の強さを実感した
- 形態素解析でレビュー内の名詞を抜き出したら、満足度1のレビューには「紫外線」「ダニ」「効果」、満足度4〜5には「コードレス」「パワー」といった単語が目立った
- 楽天市場のレビュー投稿者の性別・年齢を見たら、「高級志向のシニア向け」と謳われていた掃除機の実際の主購買層は30〜40代だった
- ただし性別・年齢が入力されているレビューは全体の半分程度で、しかも「10歳未満」が掃除機を買っている謎のデータもあり、データの信頼性自体に限界があった
手作業とPythonでコツコツ、という時代でした。
1.「生の声」への渇望は、11年経っても変わっていない
まず結論から言うと、「実際に使った人の生の声を知りたい」という欲求そのものは、AI時代になっても全く色あせていません。
ホットリンク社の2026年調査(2026年5〜6月、n=1,000)によると、85.9%が直近1年でクチコミを参考に購入した経験があり、これは前年(86.1%)とほぼ同水準。信頼できるクチコミの特徴として最も多く挙がったのは「実際の購入・利用者の体験」で81.4%でした(コマースピック)。
| 信頼できるクチコミの特徴(複数回答) | 割合 |
| 実際の購入・利用者の体験 | 81.4% |
| 良い点・悪い点の両方が書かれている | 59.8% |
| 自分と属性・悩みが近い人の投稿 | 37.5% |
| 写真や動画がある | 37.4% |
※出典:ホットリンク「クチコミが購買に与える影響調査2026」
消費者庁の調査でも、63.9%が「否定的なクチコミで購入をためらう」と回答しています(ネットショップ担当者フォーラム)。2014年の記事で見つけた「負のクチコミの影響力が強い」という法則性が、11年経っても健在だったわけです。
| 消費者庁「消費者意識基本調査」の主な結果 | 割合 |
| ネット上の評価が高い商品を選ぶ | 70.1% |
| 否定的なクチコミで購入をためらう | 63.9% |
| レビュー件数の多さが購買に影響する | 50.6% |
| 公式情報よりクチコミを重視する | 36.5% |
| 低評価でも好意的なクチコミで購入を決めた | 23.7% |
海外の統計でも、クチコミは割引・クーポン(32%への影響力)よりも購入決定を左右し、レビューが5件以上ある商品はない商品より270%売れやすい、というデータもあります(Shapo 2026年レビュー統計)。
2.でも「誰が書いたか分からない」が新しい問題に
2014年当時、私たちが心配していたのはせいぜい「サクラ・やらせ」でした。しかし今は、そもそも人間が書いたかどうかすら怪しい時代になっています。
生成AIの進化で、偽レビューを自動かつ大量に作ることが技術的に簡単になりました(日経クロストレンド)。
| 偽レビューをめぐる数字 | 調査 |
| 過去1年間に少なくとも一度は偽レビューに遭遇:82% | Capital One(2026年3月・米国) |
| オンラインレビュー全体に占める偽物の推定割合:約30% | 各種調査(米国) |
| レビューが「AIっぽい」と感じただけで疑う人の割合:46% | 各種調査(米国) |
日本では2023年10月に施行された景品表示法のステルスマーケティング規制が、まさにこの問題への法制度側の対応です。今年に入ってからも摘発が相次いでいます。
| 事例 | 時期・処分 | 内容 |
| 化粧品会社フレイスラボ | 2026年3月・東京都が措置命令 | 優良誤認・有利誤認・ステマの3類型フルセットで初認定 |
| 写真加工アプリ「SNOW」 | 2026年8月・消費者庁が措置命令 | インフルエンサーに広告と分からない形でX投稿を依頼 |
「星5をつけることが条件」のような依頼も、事業者の表示であることを明示しなければ違反になるルールです。
3.企業側は「AIに要約させる」方向に舵を切った
一方で、レビューを読む側の負担を減らそうと、企業側もAIを使い始めています。Amazonは購入確認済みレビューの中から複数の購入者が共通して述べている内容を拾い、AIが短い要約を生成する機能を展開中(日本語でも確認できます)。楽天でも「Rakuten AI」による商品特徴の要約や、最大3,000件のレビューを約1分で分析する「ラクレポ」といったツールが登場しています。
ただし、消費者の受け止め方は一枚岩ではありません。Omnisendの2026年1月調査では、米国消費者の86%がオンラインレビューを信頼する一方で、同じく86%が「AIによって自動生成されたレコメンデーション」に不安を感じると回答しています(ネットショップ担当者フォーラム)。

【図1】レビューへの信頼とAIへの不安、同じ86%(Omnisend 2026年1月調査)
同じ86%という数字で、レビューへの信頼とAIへの不安がきれいに対をなしているのが興味深いところです。人間の「生の声」は信じたいけれど、それをAIが加工することには抵抗がある、ということなのかもしれません。
4.そして「読む側」もAIになり始めている
ここが2014年には想像もしなかった変化です。博報堂買物研究所の「AIショッパー調査」(2026年2月、全国20〜69歳2万人)によると、情報源としての信頼度は生成AIの回答が51.7%で、ECサイトのレビュー(48.6%)を上回りました。
| 博報堂「AIショッパー調査」の主な数値 | 数値 |
| 情報源としての信頼度(生成AIの回答) | 51.7% |
| 情報源としての信頼度(ECサイトのレビュー) | 48.6% |
| 買物に生成AIを使う「AIショッパー」の割合 | 24.6%(約4人に1人) |
| 最終的な購入判断も生成AIに委ねたい | 約60% |

【図2】買物のどこまでを生成AIに任せたいか(博報堂買物研究所「AIショッパー調査」)
日本ダイレクトマーケティング学会の調査でも、生成AIの信頼度はSNSを上回るという結果が出ており、利用者の34.2%が「検索回数が減った」、28.6%が「サイトを回遊する時間が減った」と実感しているそうです。ChatGPTやPerplexityのようなAIが商品比較から購入まで代行する「エージェンティックコマース」も広がりつつあり、Perplexity Shoppingは5,000以上の加盟店から横断検索し、そのまま決済まで完了できます。
面白いのは、調査によって数字がけっこうバラバラなこと。
| 調査元 | 「生成AIを参考にする」割合 | ECレビューとの関係 |
| ホットリンク(2026年) | 17.7% | ECレビュー(70.7%)が圧倒的優位 |
| 博報堂(2026年2月) | 信頼度51.7%(AIショッパー24.6%) | ECレビュー(48.6%)を逆転 |
| 日本ダイレクトマーケティング学会 | SNSより信頼度が高い | 口コミ・検索よりは低い |
ホットリンク社の調査では生成AIの推薦を参考にする人はまだ17.7%で、ECサイトのレビュー(70.7%)が圧倒的という結果でしたが、博報堂の調査では逆転しています。調査対象や設問の切り口の違いによるものだと思いますが、「価格.comと楽天市場でレビュー数が全然違う」と首をひねっていた2014年の自分を思い出しました。この手の調査は、聞き方ひとつで結果がガラッと変わるものなのかもしれません。
企業側も、この変化に対応し始めています。「GEO(生成エンジン最適化)」と呼ばれる、生成AIに自社の情報を「引用」してもらうための施策が広がりつつあり、そこでもやはりクチコミや体験談をコンテンツに組み込むことが重要とされています。AIに評価されるためにも、結局は「人の生の声」が必要、という構図です。
5.まとめ
11年前は形態素解析でレビューの中から「紫外線」「ダニ」「猫」といった単語を一つひとつ手作業で拾っていましたが、今なら生成AIに投げれば一瞬でアスペクトごとの感情分析ができてしまいます。技術的な手間は劇的に減りました。
一方で、客が本当に求めているもの――「実際に使った人の生の体験」――は、2014年からまったく変わっていません。85.9%がクチコミを参考にし、81.4%が「実際の利用者の体験」を最重視する、という数字がそれを物語っています。
変わったのは、その「生の声」を届ける主体と経路です。
・書く側にAIが混ざるようになり、「誰が書いたか分からない」問題が生まれた
・読む側の負担を減らすためAIによる要約機能が広がったが、消費者はその「AIによる加工」自体には不安を感じている
・そして今度は、読む側もAIに置き換わり始めている(生成AIの信頼度がレビューを逆転したという調査まで登場)
・法規制(ステマ規制)や検知技術(C2PA、AI生成テキスト検知)が、その間をなんとか埋めようとしている
客が求めているのは今も昔も「生の声」ですが、その声を「誰がどう届けるか」というレイヤーが、11年でまるごと1つ増えてしまった、というのが今回の調査の結論です。ちなみに国内最大級のクチコミサイトの一つである食べログも2025年に20周年を迎えたそうで(Tabelog Tech Blog)、クチコミという営みそのものが、ちょうどネットの歴史と同じだけの時間、姿を変えながら続いてきたんだなと感慨深くなりました。
おまけ:今回の調べ方
2014年の記事では、価格.comや楽天市場のレビューをBeautifulSoupでスクレイピングし、形態素解析にかけて集計する、という工程を全部自分の手でやっていました(その2の記事に「見辛いですが」と書いてあるくらい、生データをそのまま貼っていた記憶があります)。
今回はNotebookLMのDeep Research機能に「生成AIとクチコミの関係」というテーマを投げて調べてもらい、5分ほどで30件以上のニュース・調査記事を自動収集、ブリーフィング・ドキュメントとしてまとめてもらいました。そこから気になった調査を個別に読みに行って裏取りする、という流れです。
11年前は「レビュー1件1件をコードで処理する」作業でしたが、今は「AIが集めてきた情報のどれを信じるか」を判断する作業になった、というのも、今回のテーマそのものだなと思います。
参考文献・データ出典
・「クチコミが購買に与える影響調査2026」コマースピック(ホットリンク調査)
・「クチコミ実態調査」ネットショップ担当者フォーラム(消費者庁「消費者意識基本調査」)
・「生成AIフェイクレビュー撲滅に新技術 嘘を見抜く京大発のアプリ」日経クロストレンド
・「レビュー信頼度86% vs AI不安度86%の衝突」ネットショップ担当者フォーラム(Omnisend調査)
・「買物の決め手は”レビュー”から”生成AI”へ AIショッパー調査」博報堂
・「生成AIの信頼度、SNSを上回る」日本ダイレクトマーケティング学会
・「写真加工アプリ『SNOW』にステマで措置命令」ITmedia
・「フレイスラボに景表法措置命令、3条項フルセットの不当表示認定」
・「食べログ黎明期の振り返りとAI時代のこれから」Tabelog Tech Blog
・調査補助:NotebookLM Deep Research

